相続対策や不動産に関する税務を主たる事業とするスリーアローズ税理士事務所(大阪市)。三矢清史代表は、CPM(米国公認不動産経営管理士)、CCIM(米国認定不動産投資顧問)の資格を持ち、不動産・相続関連のセミナーなどで家主に有益な情報を発信している。三矢代表に同事務所の取り組みについて話を聞いた。
不動産税務に強み
―不動産業界の税務に携わって長いとお聞きしました。
前職で約13年勤務した会計事務所の所長の実家が不動産会社を経営していました。その関係で不動産に強い会計事務所として不動産関連の税務に多数携わりました。不動産オーナーの確定申告や土地活用の相談、相続税の申告などを経験し、最終的には相続チームのリーダーを務めました。
―経営学も学ばれたそうですね。
勤務の傍ら税理士の資格を取得し、税理士だけだと視野が狭くなると考え、通信制大学で経営の勉強をしました。このときの学びが今の仕事に役立っています。仕事柄、社長と話をする機会が多いため、経営に関する共通の語彙(ごい)を持つことができたのはよかったです。
セミナー軸に活動
―独立してから、強みとしていることは。
開業時に四つ決めていたことがありました。一つ目はセミナーを中心に活動するということです。会計事務所勤務時から、所長の代わりにセミナー講師をしており、その経験を生かして週末にセミナーを開催することが多いです。二つ目はCPM、CCIMの資格を取得することです。こちらも前職時代、不動産投資会社と取引があり、投資分析など知識レベルの高い個人投資家の確定申告を担当させてもらったのがきっかけでした。
―残り二つの目標はどうですか。
三つ目は自身で不動産投資をすることです。ここまでの三つはかなえることができていて、唯一まだ実践できていないのが四つ目の書籍出版になります。自費出版ではなく商業出版で本を出せたら、独立時の目標はすべてかなえたことになります。
―システムを導入し不動産投資分析に力を入れてるそうですね。
不動産投資会社から紹介してもらった顧客との会話では投資指標などの専門用語が飛び交います。自分でも指標を出せるようにと、AI(人工知能)不動産分析ツールを導入しました。CPM、CCIMの資格は開業1年後から受講し取得したのですが、今では一般社団法人CCIM JAPAN(東京都港区)の会長として推進活動にも力を入れています。
―クライアントはどのような人が多いですか。
不動産投資に関心を持つ人が増えたことで、今は地主よりサラリーマン投資家が多いです。クライアントの属性を細かく分析したわけではないのですが、肌感覚ではサラリーマン投資家が6割、地主が4割です。24年は、クライアントの確定申告を180件ほど手伝いました。前職では地域のJA(農業協同組合)と懇意にさせてもらっていたので、農家のお客さまもいます。土地を保有されているので、高齢化で相続の問題に直面し、相談に来られます。
―主な商圏は大阪ですか。
ほとんどはそうです。ただ、SNSなどで発信するようになり「『ユーチューブ』を見て、どうせ依頼するなら不動産の案件に詳しい税理士にお願いしたい」と、遠方からも問い合わせを頂くようになりました。愛知県や長野県のクライアントもいます。
―不動産に詳しい税理士は少ないのですか。
多くはないと思います。特にCPMやCCIMの取得者というと、ほとんどが管理会社や仲介会社に勤務している方が多い印象です。投資分析ツールまで導入している税理士は、周りでもあまり聞いたことはありません。そのため、お客さまには不動産の購入前にまず当事務所に相談していただくよう、お願いしています。近年のインターネット普及のおかげで、個人投資家が自ら情報収集できる環境が少しずつ広がったりしているのは不動産業界として良い傾向だと思います。
―ご自身でも不動産投資をしています。
新型コロナウイルス感染拡大前から始めたので、まだ保有戸数は多くないですが、空き家投資をしています。仕事柄、いろいろな事業者とのつながりができるので、ありがたいことに情報が早く入ってきます。おもしろいところでは、家族信託の勉強をしに行った際、介護施設の人と知り合いになり、入居者が手放したいという物件を直接紹介してもらったこともありました。
―思わぬところに縁があるのですね。
そうですね。当事務所には、投資家、不動産会社、仲介業者、銀行、各種士業など、不動産投資に関わる多角的な視点での情報が集まってきます。これらを有効活用してもらいたいので、情報発信に軸を置いています。
資産減少を防止
―不動産投資の問題点についてはどのように考えていますか。
不動産投資は、個人投資家が正しい情報にアクセスしにくいというのが長年の課題でした。過去のクライアントの中にも不正融資問題の際に、上場企業に勤めているにもかかわらず、自己破産せざるを得なかった人もいます。そこまでではなくても、価格と情報の価値が見合わないセミナーや講座に高額の支払いをしている人もいます。
―セミナーでは耳の痛い話もするそうですね。
私はセミナーやユーチューブで「耳の痛い話をします」と断ってから話をすることも多いです。そしてクライアントにはまず「買うのも売るのも事後報告ではなく、購入前、売却前の検討段階からご相談ください」と伝えるようにしています。
―中長期での目標を教えてください。
私の目的は、不動産絡みで失敗して資産を目減りさせる人を一人でも減らしていくことです。相続税を払うために事業者に言われるまま、時価額よりも安く売却してしまったり、節税のために物件を購入したはずなのに法人設立と法人での保有を勧められて、所得税を払うはめになったり。大手業者が言うことだからといって正しい情報とは限らないということがあります。このような失敗談を発信して、資産を最大限に守ってもらう、それが自分の役割だと思っています。
事務所概要
社名:スリーアローズ税理士事務所
住所:大阪市淀川区西中島3-15-7 4階
設立:2015年9月
事業内容:相続税試算および相続対策、法人設立シミュレーション、不動産活用コンサルティング、税務申告書類作成
代表プロフィール
1978年5月13日生まれ。滋賀県高島市生まれ。現在のひょうご税理士法人勤務中の2015年2月に税理士登録を行い、9月にスリーアローズ税理士事務所を開業。ユーチューブチャンネル「相続や不動産投資のスリーアローズ税理士事務所【三本の矢】」で情報発信中。
(2024年9月2日11面に掲載)




