投資用マンションの販売会社を中心に構成された業界団体、一般社団法人新しい都市環境を考える会(以下、都環会:東京都新宿区)は、投資用不動産の販売員向けの資格を創設した。有資格者であることで、顧客に安心感を提供。投資用不動産販売会社を選定する指標の一つになり得ると考える。その先に目指すのは、業界の健全化だ。
顧客への安心感で差別化
1426人が受験 合格率46%
都環会は投資用マンションの販売員向けの認定資格「投資不動産販売員」を2023年に創設。受験者は会員に限定していたが、24年4月から一般受験も開始した。北田理会長は「投資用マンションの販売会社は、東京都に本社を置く企業だけでも500社以上あるといわれている。だからこそ、資格の有無が顧客から見た際の差別化になる」と話す。
同資格は、投資用マンションの販売営業に特化したもの。試験問題は不動産、金融、税制、社会情勢、投資リテラシーといった幅広いジャンルから構成される。宅地建物取引士(宅建士)資格ではカバーできていない知識を網羅するという。北田会長は「販売員にとって、登竜門になる資格として位置付けている」といい、正しく勉強した人が合格する難易度の試験問題を構想した。
23年4月〜24年3月は、受験資格を都環会の会員企業に限定していたが、24年4月から一般受験を開始。9月末時点での累計受験者数は1426人で、合格者は661人。合格率は46.35%だった。
完全オンライン試験で、年度初めの1週間を除く通年で受験が可能だ。1回の試験は90分で、単元やテーマごとにランダムに40問が出題される。
宅建士資格を持っている場合は、5点免除講習を受けられる。同資格の試験問題作成に関わったKen(ケン)ビジネススクール(同)が免除講習を開催している。合格者には、登録番号付きの登録証を発行する。
「一人の悪質な投資勧誘が、投資用不動産業界全体のイメージダウンにつながることを阻止したい。資格保有の有無が、健全な販売営業かどうかを判断する際の指標になることを目指す」(北田会長)
構想から資格創設までは、8年の月日を要した。
123の加盟社 10年で4倍
14年に設立し、19年に一般社団法人化した都環会のミッションは、業界の健全化と発展だ。
東京都を本社に置く投資用マンションの販売会社81社を正会員とし、全123社(24年10月末時点)が加盟する都環会。設立時は30社程度でスタートし、10年で4倍の会員数へと拡大した。
活動内容は、会員企業向けの勉強会や今後の市場動向をテーマにしたセミナーの開催だ。経営者を対象とした定例の勉強会は年3回実施し、毎回平均120人が参加する。そのほか、年1回オンラインで開催する研修会では、各社経営者から現場スタッフまでが参加し、1000人超が出席する。直近の研修会では、消費者契約法をテーマに取り扱った。
会員企業の実務の質向上や意識改革に努める一方で、団体の意義について北田会長は次のように語る。「実需用不動産と比較した際に、投資用不動産の市場は大手企業が少なく、専門の業界団体もなかった。そのため、国に実情が理解されないまま、法制度の改正が行われてしまうこともあった。将来的には、都環会が、国・行政と業界をつなぐパイプ役を担える団体へと成長したい」
登録証を発行 健全性の証明に
業界の健全化を目指すにあたり、北田会長が同資格に期待するのは優良な企業・販売員の見える化だ。
試験の合格者に発行する登録証には、個人情報がひもづくことになる。例えば登録証を保有する販売員が問題を起こした際に、その状況を都環会が把握することができる。北田会長は「問題を起こした場合、社名を変更すれば市場で出直せるような状態を変えていきたい。有資格者の増加に伴い、情報が透明化され悪質な事業者が淘汰(とうた)されていく。業界の地位が上がり誇りを持てる業種へと成長することで、従事者も増えていくだろう」とみる。
30年には受験者数1万人、同資格の保有者5000人を目指す。今後は東京都以外にもエリアを広げ認知度拡大を図る。24年12月からは、投資用マンションの販売物件が多い大阪府に本社を置く企業への受験を促していく。
(齋藤)
(2024年11月11日20面に掲載)