ハウスメーカーのトヨタホーム(愛知県名古屋市)は、賃貸住宅を商品化し、本格的に展開していく。戸建ての受注が減少する中、住宅建築事業を強化するべく裾野を広げる。1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)での受注を進め、さらなる事業拡大を狙う。
25年度に200棟受注計画
23年度120棟完工
トヨタホームは、賃貸住宅事業に力を入れていく。足元の受注数も堅調だ。
賃貸住宅を商品化した2023年度の受注棟数は120棟。24年度の受注棟数は前年度比10増、受注高も同50%増の着地を見込む。受注単価は、23年度で平均7000万円だったのが、24年度は平均1億1000万円に伸長している。資産活用事業部の西郷泰信部長は「東京都と神奈川県での受注が好調だった」と話す。
23〜24年度にかけて完工実績が積み上がってきたことで、オーナーを招いた物件見学会などを実施し集客しやすくなった。加えて、受注営業担当者の提案スキルが向上したことが業績伸長の要因だと同社はみる。
鉄骨軸組み工法の新商品エスパシオUDの外観
ブランドは「TH‐Maison(ティーメゾン)」。商品のシリーズ展開は、鉄骨ラーメンユニット工法の「TH‐Maison SINCE(シンセ)」と鉄骨軸組み工法の「TH‐Maison ESPACiO(エスパシオ)」の2種類。2〜3階建ての集合住宅、長屋タイプ、戸建てに対応する。エスパシオは設計の自由度が高い工法のため、比較的狭小地が多い1都3県で高い需要を見込む。24年11月には、自由設計の精度をさらに高め、15cm単位での設計を可能とした賃貸商品「TH‐Maison ESPACiO UD」を同シリーズに追加した。
愛知と東京に重点
同社のメイン商圏は愛知県と東京都だが、顧客層やニーズ、建築・販売後の管理体制は大きく異なる。
本社を置く愛知県では、ユニットで建てるシンセが主力。特に郊外で100坪以上の土地での建築を得意としている。愛知県内の受注規模の平均は、24年度実績で1棟8戸。車社会のため、1住戸に対し車2台分の駐車場の確保が差別化になるという。西郷部長は「車に関わる設備や機能を付加価値として強化していく。1住戸に1台以上の確保に加え、電気自動車(EV)充電用設備の導入実績が建築棟数の約7割を占める点を強みとして伸ばしていきたい」と話す。
顧客対象は、地主が主となる。金融機関や不動産会社からの紹介を軸としながら、累計4万5000人に上る戸建て建築のOB開拓も行う。建築と販売を同社で対応し、管理はパートナー企業となる地場の不動産会社と連携する。
一方、東京都では土地の狭さから細やかな設計に対応できるエスパシオを主力商品とする。営業手法は愛知県と同様だが、顧客属性は法人が多い。グループのトヨタホーム東京( 東京都千代田区) が窓口となり、販売営業および建築後の管理をサブリースで担う。
「当社は東京都での展開においては後発。そのような中、対応力を上げるために新商品のエスパシオUDをシリーズに追加した背景がある。商品ラインアップの充実により、適材適所で最適な提案をしていく」(西郷部長)
省エネ化に注力
西郷部長は「省エネ商品の開発に注力している。3月からは、断熱等級6以上に対応できる設計・建築体制を整えた」と語る。ZEHーM(ゼッチマンション)やZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準を大きく上回ることを条件に持つ「GX(グリーントランスフォーメーション)志向型住宅」に対応していく姿勢を示す。30年に向けては、高断熱性能やZEH化による付加価値向上で、1棟あたりの受注単価を上げていく狙いだ。
25年度の受注棟数計画は、200棟。このうち1都3県では120棟を目指す。そのために、開拓の余地があるとみている戸建てのOB顧客への営業を強化する。
賃貸住宅を商品化したタイミングで、専任の販売営業担当を配置。23年度比で10人ほど増員し、3月末時点で愛知県に5人、1都3県に16人を配置している。「実需用物件とは商談の流れが違うため、賃貸住宅を販売できる人材の育成も並行して行っていく。28年までを目安に、1都3県を中心に30人体制への増員を目指す」(西郷部長)
トヨタホーム
愛知県名古屋市
資産活用事業部
西郷泰信部長(58)
(齋藤)
(2025年5月5日20面に掲載)