募集データ 賃料実績と乖離
賃貸住宅の投資分析・判断を行う際に、一般に広く用いられているのは、住宅情報提供会社が公開する「募集データ」です。しかし「募集データ」を用いた分析は、対象となる物件の実態と分析結果が大きく乖離(かいり)する場合があるので注意が必要です。
「募集データ」で示されている賃料(以下、募集賃料)は、テナント予定者に家主が提示する希望の賃料です。ところが賃貸市場の現場においては、募集賃料通りでは入居が決まらない場合に、賃料の値下げが行われます。
また、物価上昇局面においては、入居期間の長いテナントの賃料は、新たに契約を結んだテナントの賃料よりも安い可能性があります。本来、正確な分析のために知りたいデータとは、実際にテナントが支払っている賃料(以下、支払い賃料)の実態です。これが後述する「管理データ」です。
賃貸住宅の空室率(稼働率)の実態を把握するうえでも同じような問題が生じがちです。一般的に知られている空室データには、総務省の「住宅・土地統計調査」があります。「住宅・土地統計調査」は全国をカバーしていますが、調査が5年ごとであるためタイムリーな空室率を確認することができません。
また、経営難などの原因で市場からほぼ撤退している物件まで含んでいることから、空室率が高くなり過ぎるという問題があります。
反対に、J-REIT(リート)や大手アパートメーカーが公表している空室データは、実態より空室率が低く表示される傾向があります。J-REITや大手アパートメーカーの管理物件は、高い品質の物件が多く含まれているうえに、組織的な高いリーシング体制を有しているからです。また、J-REITや大手アパートメーカーが公表しているデータは一部の地域に限られています。
従って、賃貸住宅の投資分析や判断を行う際に、「住宅・土地統計調査」のデータを用いると、物件の空室リスクを高く見積もり過ぎる可能性があり、またJ-REITや大手アパートメーカーのデータを用いると物件の空室リスクを低く見積もり過ぎる可能性があります。




