入居者が家賃保証会社を選べないのは何故? 現行制度と共に解説
賃貸経営|2023年06月02日
Q家賃を保証する会社が最近たくさん見受けられますが、ほとんどの会社では自社の商品の詳細内容をホームページに公開していません。
消費者は、家賃保証会社と契約するにあたり、事前に検討する機会を得られぬまま保証契約を結ばされることになってしまいます。
なぜなら、お部屋の契約を決めてから家賃保証に入ってくださいと依頼があるからです。
お部屋を借りる方が、自由に家賃保証会社を選べないのはおかしいと仕組みと思います。取材をお願い致します。
賃貸借契約において、入居者が家賃を支払えなかった場合、家賃債務保証会社が家賃を立て替えます。家賃債務保証サービスでは、入居者が契約時に家賃債務保証会社に対して年間保証料を支払いますが、質問者様がいう通り、管理会社(仲介会社)が保証会社を指定するケースが一般的です。何故こうした仕組みとなっているのか、取材しました。
■~~~ 目次 ~~~■
❶入居者、家賃債務保証会社、管理会社の関係は?
❷家賃債務保証サービスの制度
❸入居者が家賃債務保証に加入するメリット
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入居者、家賃債務保証会社、管理会社の関係は?
▲入居者・管理会社・大家・家賃債務保証会社の関係図
家賃債務保証サービスについて言及する前に、まずは入居者・管理会社・家賃債務保証会社のそれぞれの役割について整理していきます。部屋を借りて住む場合、入居者は、管理会社へ毎月家賃を支払います。管理会社はこの家賃を大家に送金。その報酬が管理料として管理会社の収入となっています。
では、もし何らかの理由で入居者からの家賃の支払いが滞ったとします。すると管理会社は大家へ家賃分の送金ができません。大家は入居者がいるのに家賃分の収入がない状態となります。こうなると管理会社は支払われなかった家賃を回収するために、督促業務をしなければいけません。回収できなければ、大家からの信用を落としたり、管理替えのリスクを負います。大家にとっても、家賃滞納は経営リスクに直結する問題です。
こうした家主や管理会社のリスクを回避するため、家賃債務保証会社は入居者が支払えなかった家賃分の立替を行っています。入居者からの入金が滞ったとしても一定期間であれば家賃債務保証会社が管理会社・大家に家賃を送金するので、大家は安定的な賃貸経営を行うことが出来ます。
つまり、家賃債務保証サービスは賃貸借契約における貸し手側のリスクを担保するサービスとなっています。
家賃債務保証サービスの制度
▲家賃債務保証契約における各者の関係図
家賃債務保証サービスの制度にも触れておきます。家賃債務保証サービスは一般的に、代理店制度を適用しています。家賃債務保証会社は、仲介会社・管理会社と代理店契約を結んでいます。各不動産会社は、代理店契約を結んでいる家賃債務保証会社の中から、自社の判断基準に準じて家賃保証サービスの提案を入居者へ行っています。この代理店制度が適用されている上では、入居者が自由に家賃債務保証会社のサービスを選ぶことは難しいでしょう。
では何故、家賃債務保証サービスは代理店制度を適用しているのか。理由は様々ですが、家賃債務保証会社は大家の情報を獲得できないことが上げられます。家賃債務保証会社としては、入居者から選ばれたとしても、入居者が住みたい物件の所有者を知らない以上、両者を結ぶ契約行為が成り立ちません。そのため、入居者・大家の情報が集約される管理会社が代理で販売している。という仕組みとなっているのです。
入居者が家賃債務保証に加入するメリット
ここまで、家賃債務保証サービスの仕組みを賃貸経営や業界の視点から説明してきました。最後に、入居者が家賃債務保証サービスに加入するメリットについて語っていきます。
上記でもお伝えした通り、家賃債務保証サービスは賃貸経営のリスクを軽減するためのサービスです。例えば、家賃債務保証会社を使わなかった場合でも、入居者が家賃を滞納するリスクは当然あります。そういった事態に備え、管理会社は賃貸借契約時に「敷金」として入居者から十分な金額を預かる事もあるでしょう。実際、家賃債務保証サービスが無かった時代には、敷金を多く受け取り、滞納が発生した時のリスクヘッジを行っていました。つまり、家賃債務保証サービスがあることで、入居者が支払う敷金を低く抑えられているのです。入居者は以前よりも安い初期費用で賃貸物件を借りることが出来る利点があります。
いかがでしたでしょうか。確かに入居者は、管理会社が提示した家賃債務保証会社のサービスに加入する流れになっているので、選択の余地が少ないように思えますね。ただ、質の悪い家賃債務保証会社を勧めて入居者が退去してしまうと、自ずと管理会社の評判も悪くなってしまいます。空室率が高止まりする時代に、入居者のことを考えない管理会社は遅からず淘汰されるでしょう。こうした背景や事情を踏まえて、信頼できる管理会社の物件に入居することが最善なのではないかと思います。ご質問いただき、ありがとうございました。
(記事執筆:デジタルメディア事業部山本悠輔)