全国賃貸住宅新聞が9月にアンケート調査を行った「入居者に人気の設備」のうち、2023年に要望が急増した設備では「インターネット無料(以下、ネット無料)」が最多だった。エアコンが初登場で4位に入った。
エアコンが4位にランクイン
調査で「希望」9割 動画視聴も影響か
全国賃貸住宅新聞は「賃貸住宅の人気設備」をテーマとした独自調査を行い、全国の不動産会社512社が回答した。「23年に入ってから部屋探し顧客の希望が大幅に増えた設備(複数回答)」で、トップとなったのが「ネット無料」。150社が回答した。
管理戸数約2000戸の不動産流通センター(兵庫県加古川市)では、ここ数年、ネット無料のニーズの増加を感じており、23年になっても需要は増え続けているという。同社は入居者ニーズを独自アンケートからつかんでいる。管理物件の入居者の退去時に回答を依頼する。アンケートにある「あればよかった設備」という項目で、20~40代の退去者の9割近くがネット無料を挙げた。
管理部の松尾健太郎氏は「動画の配信サービスが普及したことが影響しているのだろう」と話す。自宅でスマートフォンから動画を視聴したい人が増えたことで、ネット無料の必要性を感じている。
高速ネットが2位 転勤者のニーズ
2位で109社が回答したのは「高速インターネット(以下、高速ネット)」。
福岡市を中心に3124戸を管理する大央(福岡市)では、23年に入ってから高速ネットのニーズが急増した。
管理物件の約7割が法人契約だ。実際に入居する企業の従業員は、リモートワークが主体ということもあり、高速ネットのほうが業務をスムーズに行えるため好まれているようだ。仕事中にインターネットの通信が止まると困るため、高速ネットの需要が高まる傾向にある。特に40~50代の転勤者からの要望が多い。若年層の場合はすでに使っているものを継続して契約し続けることもあるからだ。
そのため、今では新築物件では必ず高速ネットの導入提案を行っている。賃貸営業部の中村龍太課長は「新築時に導入すれば、壁内に配線をするのが容易で、外観的にも良いので、後付けより入居者からの評判も良い」とコメントした。
宅配ボックス 受取の需要継続
回答数3位は「宅配ボックス」。沖縄県那覇市を中心に賃貸住宅を2668戸管理する大央ハウジング(沖縄県那覇市)によると、宅配ボックスは日中働く20~40代の会社員などからの引き合いが多いという。単身者・ファミリー共に需要があるが、単身者の需要のほうが高いという。自宅に人がいない時間が長い傾向にあることが理由の一つだ。
賃貸部の大城安仁氏は「那覇市内にある物件のうち、新築だと9割、築5年以内だと7割ほどの物件で設置されていると感じる。新型コロナウイルス禍で増加した通販の利用が定着し、宅配ボックスのある物件から転居する人が新居にも宅配ボックスを求めるケースが多い」と話す。
猛暑で設置必須も 「1台は当たり前」
23年に要望が急増した設備で、初登場で4位に入ったのが「エアコン」だ。猛暑の影響で、これまで一般的でなかった地域でも設置が広がる動きが出てきている。
「1台は必須。単身者でも、ファミリーでも『あって当たり前』という雰囲気で、希望条件に入れる」と話す不動産会社もある。この不動産会社の管理物件では、ファミリー向け物件に1室は必ずエアコンが付いているという。
前回と比較し、「TVモニター付きインターホン」(5位)、「防犯カメラ」(6位)は順位が変わらなかった。順位を下げたものの、エントランスのオートロックも7位に入った。セキュリティー面を重視する傾向は続いているようだ。
(2023年10月16日1面に掲載)