【管理業法を解説!~前編~】200戸以上の管理受託、無登録は罰則へ

法律・制度改正|2022年06月13日

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 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下、管理業法)の移行期間が残り2日に迫る。15日以降、200戸以上の賃貸管理事業者が営業許可を申請していない場合、無許可営業となり、法律上罰則対象となる。管理会社は管理業法を理解し、法律にのっとった運用を行う必要がある。改めて、管理業法と実務上の注意点を解説していく。

骨子は登録制度とサブリース規制

登録は「参入規制」 ルール順守徹底を

 管理業法は大きく二つの骨子からなる。賃貸住宅管理事業者の登録制度(以下、登録制度)と、特定転貸借契約(マスターリース)の適正化だ。

図1

 2021年6月15日の管理業法施行から開始した管理会社の登録制度は、移行期間があと2日で終了する。移行期間終了後、200戸以上の賃貸住宅を管理していながら登録を得ていない事業者は、無許可営業として罰則の対象になる。

 登録制度は、賃貸管理業の参入を規制する法律といえる。15日以降、賃貸住宅の委託管理を200戸以上行っている事業者は必ず登録しなければならない。有効期間は5年間で、5年ごとに更新する必要がある。登録料は9万円で、更新手数料はオンラインの場合は1万8000円、書面の場合は1万8700円。

 国土交通省による認可を得ずに200戸以上の賃貸住宅管理を営んだ場合、もしくは不正な手段で登録を受けた場合は、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる。

 サブリース事業への規制は先行して20年12月15日に開始している。また、登録制度、マスターリース規制ともに、15日から法解釈・運用の考え方が一部改正になる。重要な変更点は、重要事項説明と書面交付についての2点だ(図2参照)

図2

賃貸管理の基軸は建物の維持保全

 管理業法で「管理業務」と定義するのは、建物管理と金銭管理の二種類。基軸となるのは、「維持保全を行う建物管理」だ。一部のみを行う場合は管理業者にはあたらない。

 維持保全を行う建物管理とは、居室の管理を行っていることが必須条件だ。次に①廊下や階段などの共用部分②居室内の電気・水道設備③居室外の電気・水道設備やエレベーターなど、①〜③いずれかの点検・清掃と修繕を行っていれば、「維持保全を行う建物管理」とみなす。

 もう一つは金銭管理だ。家賃や敷金などの入出金の管理については、建物の維持保全を行っている場合のみ、「管理業務」とみなされる。

 次からは、登録制度のポイントになる項目を解説する(図3参照)

図3

■業務管理者の選任

 業務管理者(以下、管理者)は、営業所や事業所ごとに1人以上選任しなければならない。複数の営業所の兼務は不可。

 管理者の要件は①賃貸不動産経営管理士(以下、管理士)の有資格者②宅地建物取引主任者(以下、宅建士)の有資格者のうち指定講習の受講が完了した者の二つだ。なお、どちらも賃貸住宅の実務経験が2年以上、もしくは実務試験講習を受けた者に限る。

 20年までに、従前の制度での管理士の資格を取得・登録済みで、5月31日までに移行講習を完了した場合も業務管理者として認定される。

■重要事項説明・書面交付

 管理受託契約に関わる書面は、重要事項説明書、契約書ともに電子交付が可能だ。テレビ電話などを活用し、非対面で説明することもできる。

 重要事項説明(重説)の時期について、オーナーが正確な情報を基に判断できるようにするため、説明から契約まで1週間程度の期間を設けることを推奨している。

 管理受託契約前の重説や契約業務を行う担当者は、管理者である必要はないが、専門的な知識、経験のある者が望ましい。

■再委託禁止

 管理業法で禁止となるのは「一括再委託」だけでなく、「分割しすべての業務を再委託」する行為も含まれる。複数の会社に分割すればよいというわけではない。

■帳簿の備え付け

 委託者ごとの管理契約とその運営内容の詳細を記した帳簿を、営業所ごとに保管しておかなければならない。なお、電子データによる作成も可能で、1年ごとに作成する必要がある。該当年度終了後、5年間は帳簿の保管が必須となる。帳簿は、管理契約書とは別に用意しなくてはならない点に注意が必要だ。必須の記載事項は以下通り。

 ▶委託者の称号や氏名▶契約締結日▶対象物件(付属設備含む)▶受託内容▶報酬額(管理費だけでなく、業務で使用した水道光熱費、物品購入費など、オーナーに請求する額すべて)▶特約事項

特定賃貸借は「行為制限」 広告と勧誘に規律

 続いて、マスターリースに関する法規制と注意点を見ていこう。

 特定賃貸借(マスターリース)契約はオーナー・事業者間の一括借り上げ契約を指す。これを基に第三者に部屋を貸す契約を特定転貸(サブリース)契約といい、この事業全体をサブリース事業と呼ぶ。

 管理業法でのサブリース事業者の規制は、登録制度とは異なり、参入への制限ではない。

 また、サブリースを事業として行う場合に限るため、親族への一時的な転貸や、賃貸人と賃借人が親会社・子会社の関係にある場合などは対象にはならない。

 規制される対象には、サブリース事業者だけにとどまらず、「勧誘者」も含まれる。勧誘者とは、サブリース事業者から勧誘を委託され、マスターリース契約の勧誘を行う者すべてを指す。建設会社、金融会社、コンサルタント、ファイナンシャルプランナーなどサブリース事業者以外の者で、業種や個人・法人は問わない。

 サブリース事業者(一部は勧誘者)への規制のなかでも重要なのは、誇大広告の禁止と不当な勧誘の禁止だ(図4参照)

図4

■誇大広告の禁止

 誇大広告は、実際よりも著しく優良、有利であるように誤認させる広告で、広告媒体に限らず規制される。規制を受ける広告内容は以下の通り。

 ▶借り上げ賃料の条件、支払期間、見直しがある場合はその見直しの頻度、利回り▶建物の維持保全の実施方法▶建物の維持保全にかかる費用負担の割合▶解約に関する事項

■不当な勧誘の禁止

 不当な勧誘とは、契約の判断に影響を与える重大な事実を伝えない、またはうそをつくことを指し、これを禁止している。

 ほかにも、▶威迫(いはく)行為▶迷惑を覚えさせる時間帯の勧誘▶困惑させる行為▶執拗な勧誘が禁止されている。

夏以降検査を予定

 登録制度については、移行期間が14日に終了し、15日から罰則規定が始まる。今後、夏以降には事業者に対し立ち入り検査を行うなど、法律順守で運用されているかをチェックしていく予定だ。

 15日からは、運用や解釈についても変更がある。国交省の石島課長補佐は「新しい法律なのでまずは理解を深めることが必要。業界の健全な発展を希望している」と語った。 (柴田)

(2022年6月13日4・5面に掲載)

関連記事▶『【管理業法を解説!~後編~】Q&Aで疑問を解決!管理戸数あたりの管理者の配置基準はあるの?』

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