明和不動産、開発事業が100億円達成のカギ【地域管理会社の経営戦略】

明和不動産,TSMC(ティーエスエムシー),ソニー,タイムリー,ビットキー

賃貸経営|2023年03月13日

 明和不動産(熊本市)は、熊本県を中心に、鹿児島県、福岡県と併せて、2万4441戸の賃貸住宅を管理する。店舗は熊本県の15店を中心に、鹿児島県、福岡県など21拠点を展開し、賃貸仲介件数は年間1万件を超える。投資用不動産の開発にも強く、2022年12月期は賃貸住宅やテナントビルの売買部門を合わせ、グループの年商が90億円に到達した。創業42年で地場不動産会社の成長モデルとして、全国にその名を知らしめる。

事業の根幹、2万4400戸の管理

開発売買で安定収益を創出 TSMC工場周辺にも出店

明和不動産の会社概要

 明和不動産の連結売り上げは、近年70億〜100億円前後で推移してきた。22年12月期の売り上げは90億円で、事業別の内訳は、主力の賃貸管理が44億円、賃貸仲介15億円、開発・売買が18億円、その他13億円となっている。全体の増減を左右するのは開発・売買事業だ。

明和不動産 直近10年の売り上げ推移グラフ

明和不動産 グループ売り上げの内訳、賃貸管理の内訳グラフ

 開発事業の一連の流れは、自社で土地を購入し、賃貸住宅やテナントビルを建築した後、入居者やテナントをつけて、収益を生み出す不動産として投資家に販売するものだ。年間20棟程度、賃貸戸数にして800〜1200世帯を開発する。販売せず自社で所有を続けるものもわずかにあるが、その場合も、条件が合えば売却する。22年末には、本社に隣接する300世帯の賃貸住宅を40億円で売却した(固定資産の売却、売り上げには含まれず)。「年間約1億円の運用収益を生み出していたが、ファンドから良い値で買いが入った」(川口CEO)

 今後の目標は、開発事業を継続的に行うとともに、売買仲介による売り上げを増加させることだという。大型物件を売却した年としなかった年とでは、売り上げに差が出る。「開発事業は100か0みたいなところがある。売買に関する売上比率を、『仲介1:開発2』にしたい。売買仲介を積み上げれば売り上げが伸び、利益率も高くなる」(川口CEO)

 23年度の開発舞台は、半導体世界最大手のTSMC(ティーエスエムシー:台湾)が工場を新設する熊本県菊陽町だ。熊本市街から車で約40分の現地では、TSMCに続き、ソニー(東京都港区)も半導体関連工場の新設を決めた。今後、約1万世帯が同町に引っ越してくるとも言われる。

建設中のテナントフロア付き賃貸マンションのイメージ写真

TSMCの工場建築で湧く菊陽町で、テナントフロア付きの賃貸マンションを建設中だ。1階に支店を開設する

 明和不動産は、ここにテナントフロア付き大型賃貸マンションを建設中で、8月の竣工を予定する。工場周辺の地価は値上がり率150%に達し、建築費も高騰しているが、今最も注目されている地域で自社ビルを構えることが重要であると判断し着工に踏み切った。1階に明和不動産の支店が入り、この新店舗を足掛かりに菊陽町エリアでの販路拡大と管理獲得を目指す。「開発や売買が強ければ、結果として管理を増やすことができる」(川口CEO)

中古売買の専任者を新設 既存契約の流出防ぐ

 管理事業に目を移すと、新規管理受託数は、毎年約1000戸ペースだ。8年前には、賃貸不動産会社のタイムリー(鹿児島市)から事業譲渡により社員と店舗を引き受け、約3000戸を増やした。

明和不動産 直近10年の管理戸数推移グラフ

 悩みの種は管理の解約だ。要因の6割が、物件の売買に伴うものだという。物件のオーナーが売却を検討していることを把握できず、知らぬ間に売却されてオーナーが変わり、管理が他社に流れるケースが少なくない。

 背景には賃貸物件の利回り低下がある。熊本市街地には、10年ほど前に利回りを重視して建てられた単身用マンションが多い。家賃が下がりやすく、空室も埋まりにくいため、転売益を取るために比較的短期で売却する事例が増えている。そういったオーナーの動向をくみ取れないと、ほかの不動産会社を経由して売買が進んでしまう。

 この状況を改善するため、中古物件の仲介を専門とする売買部門の新設を決めた。管理を受託するオーナーとの関係を深め、売却を検討していればいち早く察知して購入検討者との仲介をあっせんし、管理契約が切れることを防ぐのが目的だ。既存の売買部門は新築の開発事業をメインで扱うため、中古の仲介案件は後手に回っていた。川口CEOは、ストック売り上げである管理収入をグループの柱と捉えており、今後も熊本、鹿児島、福岡3県で、管理を伸ばすことを事業拡大の根幹に据える。

明和不動産本社の写真

熊本市の中心部に本社を構える

スマートキーで仲介効率化 今春募集の新築400戸に導入

 一方、同社にとって仲介業務は、賃貸管理に必要な広告費的な側面が強い。営業スタッフの確保や来店対応に必要な店舗など、固定費率が高いからだ。そのため、コスト削減や業務効率化は日常的な課題となっている。目下注力するのが、新築賃貸物件へのスマートキーの導入だ。

 採用したのは、ビットキー(東京都中央区)が提供するスマートキーシステムだ。スマートフォンアプリ、bluetooth(ブルートゥース)、一定時間のみ開錠できるデジタルキーに対応し、内見希望者が自身で鍵を開け、部屋の中を見ることができるものだ。スタッフを現地に向かわせる必要がなくなり、手間と時間を大幅に削減できる。

 手始めにこの春入居募集を開始する新築物件400戸に設置した。入居者から毎月利用料をとる運用方法に懐疑的なオーナーもいるが、入居者の利便性が格段に向上すると考え、インターネット使い放題と抱き合わせで導入を推進する。「スマートキーを導入すれば、内見の受け付けからデジタルキーの発行まで、チャットボットで案内できる。これら一連のウェブ対応を担当する部門も、24年以降立ち上げる予定だ。いずれは店舗スタッフの手を介さず仲介できる仕組みも整えたい」(川口CEO)

 川口CEOが想定するのは、今後人口減少が進んだ時に、仲介件数が減り、店舗スタッフの確保が今以上に困難になる状況だ。問い合わせの経路は、現時点でほぼネットであり、店頭に飛び込みで訪れる人は大幅に減少している。そのため、仲介業務の効率化に注力する。「将来的に、店舗の必要性が薄れる可能性もある。スマートキーの導入はそのためにも必要。今から試行錯誤を続け、次世代型の仲介の仕組みをつくる」(川口CEO)

 グループとしては、16年より、持ち株会社のミリーヴが、株式上場を準備してきた。当初、証券会社から、上場基準をクリアするための就業規則やコンプライアンス対応など、450の課題をリストアップされた。その後、残り20項目に至るまで体制を整えたが、上場により経営の自由度が制限されることを懸念し、上場目標を取り下げた。22年末には、ミリーヴを明和不動産が吸収合併した。「中期的には、グループとして、売り上げ100億円、経常利益5億を安定して維持できるようにすることが目標だ」(川口CEO)

明和不動産 川口圭介CEOの写真

明和不動産
熊本市
川口圭介CEO(45)

 

(2023年3月13日5面に掲載)

おすすめ記事▶『明和不動産、川口会長が旭日双光章を受章』

検索

アクセスランキング

  1. 管理戸数ランキング1000社超から分析 賃貸管理ビジネスの生存戦略とは【動画】

    全国賃貸住宅新聞社

  2. 物件不足で社宅探しの時期分散

    リロケーション・ジャパン,三和アイシス,タイセイ・ハウジー

  3. デイグラン、建物診断 保険申請支援セット

    デイグラン

  4. 神吉不動産、「自分好み賃貸」の完成見学会

    神吉不動産

  5. 京都府・商店街創生センター、商店街の未来 語り合う

    京都府・商店街創生センター,ホーホゥ

電子版のコンテンツ

全国賃貸住宅新聞からのお知らせ

お知らせ一覧

サービス

発行物&メディア

  • 賃貸不動産業界の専門紙&ニュースポータル

  • 不動産所有者の経営に役立つ月刊専門誌

  • 家主と賃貸不動産業界のためのセミナー&展示会

  • 賃貸経営に役立つ商材紹介とライブインタビュー

  • 賃貸管理会社が家主に配る、コミュニケーション月刊紙

  • 賃貸不動産市場を数字で読み解く、データ&解説集

  • RSS
  • twitter

ページトッップ