2.一棟アパート「適正な元本カット」求める 「不当な高値づかみ」に憤り
その他|2021年09月02日
2018年春先に明るみに出たスルガ銀行(静岡県沼津市)の不正融資問題。一棟アパートの適正な元本カットを求める新たな被害者団体が発足し、集団交渉・提訴に向けて準備を進めている。シェアハウスの代物弁済の実現で収束に向かっているかに見えた不正融資問題だが、シェアハウス以外の物件所有者の不満が噴出。一棟アパートにもしかるべき対応を望む声が一部で高まった。根本的解決までの道のりは長そうだ。
新しい被害者団体の正式名称は「スルガ銀行不正融資等個別被害者協議会」(以下、SKK)。2020年6月に発足し、スルガ銀行の不正融資に「巻き込まれた」とする一棟アパートオーナー約100人が入会している。多くが会社員で、スルガ銀行の不正融資による「不当な高値づかみ」を主張している。それによって生じる賃貸経営の破綻リスクを軽減するために、スルガ銀行に「適切な元本カット」「損害賠償」などの何かしらの処置を求めている。
SKKの小早川真行代理人弁護士は「シェアハウス問題は氷山の一角。購入者の投資判断に影響する書類改ざんや工作がたくさんある」と主張。スルガ銀行の関与を証明するために、現在は証拠書類を収集・整理し、集団訴訟を視野に入れて準備を進めている。
スルガ銀行は、SKKの存在を認識している。広報担当者は「個別の交渉の状況については、回答を差し控えさせていただきます」と回答した。
被害者団体といえば、河合弘之弁護士率いるスルガ銀行・スマートデイズ被害者同盟(以下、SS同盟)が業界内で知られている。「不正融資問題に巻き込まれた被害者」という立場で問題解決に臨む意味では、どちらの被害者団体も同じだが、メインとなる所有物件の種類や細かい目的は異なる。
SS同盟ではシェアハウスオーナーが所属し、サブリース会社のスマートデイズ(当時)の家賃支払いが滞ったことで、オーナーの多くが資金繰りに行き詰まった。500人超が借入金を帳消しにする代物弁済をスルガ銀行に求め、実現した。
対するSKKに入会する人は、主に1棟アパートの購入者だ。事務局は「不当な高値づかみで採算が合わなくなっている」と指摘する。
SKKのメンバーの一部はスルガ銀行に元本カットを求めるADR(裁判外紛争手続き)を個別に申し立てているが、返答の鈍さや、交渉が前に進んだとしても、スルガ銀行独自の算定基準で、多少の金利下げやわずかな元本カットにとどまることに不満を募らせている。
SKKに所属するサラリーマン投資家の一人は、元本カットを希望している。東京都西八王子エリアの築古の一棟マンションを、2億2000万円で購入した。スルガ銀行からの借入額は2億円弱で、金利は4.5%。ほぼフルローンに近い。この2億円超の売買代金を7500万円に条件変更し、借入額も同水準までカットしてもらいたいという。
その物件では、固定資産税の支払いを含めると年100万円の赤字になり、万が一突発的に改修工事が発生したら「支払えない」という。そこで大幅な元本カットを希望すべく、弁護士経由で不動産鑑定士に鑑定を依頼。購入価格と適正売買価格に大きなギャップが生じていたことを知った。オーナーは「収支が合うわけがない。1年以内に赤字になる。最悪、自己破産だ」と語った。融資の過程でレントロールや審査書類の改ざんにスルガ銀行がかかわったと主張している。