復活する民泊需要 事業参入を考える際に知っておくべきこと
賃貸経営|2023年08月07日
新型コロナウイルスが5類に移行となり、インバウンドをはじめとする観光事業が盛り上がりを見せる中、民泊に注目が集まっています。空室対策や利回りの向上といった効果に期待を寄せる管理会社も多くいます。民泊を始めるために守るべき法律や、民泊物件の最新トレンドを紹介します。
民泊新法の180日ルール 転用手法がカギ
管理会社やオーナーが民泊事業を始めるためには、2018年6月15日に施行された住宅宿泊事業法(以下、民泊新法)で定める基準をクリアする必要があります。民泊新法では、宿泊施設として提供できる日数の上限が年間180日とされています。さらに各自治体の条例によっては、より厳しいルールを制定している場合があります。観光客で賑わう京都府では住宅専用地域において日数上限を60日としています。
これらの条件から、民泊新法に則りながら宿泊事業だけで利益を出すことは一般的には難しいとされています。そのため、残りをマンスリーマンションとして活用するなど、転用措置を取る必要があります。
▷▶180日営業制限で民泊新法成立 その内容は
▷▶観光都市京都 民泊営業規制を強化
2023年度より規制緩和 参入ハードル低く
また今年度より、国土交通省が民泊参入の規制緩和に注力しています。これまで民泊事業を始める場合、宅建士や賃貸不動産経営管理士といった不動産の資格が必要でしたが、指定講習を受講すれば参入可能となりました。
国家戦略の民泊特区、高い収益性を見込む
一方で、外国人誘致のための国家戦略として位置づけられた東京都大田区や大阪市といったエリアでは「特区民泊」として展開できます。特区民泊では、上記の民泊新法による180日制限がありません。最低宿泊日数の2泊3日をクリアできれば、365日運営が可能です。高い収益性が期待できる一方で、こうした規制の少なさから、コロナ禍以前は特区民泊エリアで宿泊運営を始める事業者が爆発的に増加していました。結果的に価格競争に巻き込まれた上、コロナ禍によるインバウンド消滅が追い打ちとなりその多くが廃業となっています。こうした背景から、民泊特区で施設を量産することが利益につながるとは言えないでしょう。
▷▶窮地に立つ、特区民泊の現状
▷▶コロナ禍で宿泊物件の賃貸転用相次ぐ
今後の民泊物件のトレンドは
観光事業にとって大ダメージとなったコロナ禍を経て、これからの民泊物件はどう変わっていくでしょうか。1つ目は、地方の観光都市における戸建て民泊です。1棟貸し切りで提供可能な物件は、海外から団体で来日する観光客から人気があり、高い料金でも借り手が付きます。特に温泉地や避暑地といった場所では、のんびり過ごす観光客が多く、マンションの1室よりも広々とした一軒家が好まれます。もともと空き家だった物件を活用するケースが一般的であるため、180日規制の中でも採算の取れる民泊物件と言えそうです。
また、都心部で民泊を展開する際は、OTAと呼ばれるオンライン旅行会社との連携が主流になりつつあります。7月にはデベロッパー大手の三菱地所が、民泊ポータルサイトのAirbnbと包括連携を発表しました。これにより、Airbnbの持つ外国人観光客への訴求力を生かし、より多様な人材へのアプローチが期待できます。民泊新法の180日規制を利用し、賃貸住宅と民泊と両方の顔を持つことで、集客力を高める狙いがあります。
▷▶温泉地で戸建て民泊需要増
▷▶三菱地所とエアビー、包括連携
以上のように、今後民泊事業を始めるには、収益性のための集客力とリスクヘッジをいかにバランスよく保てるかが、焦点となります。