【記事まとめ】 東急リバブル 仲介手数料裁判
法律・制度改正|2024年02月04日
2020年1月、東京高等裁判所(東京高裁)で東急リバブル(東京都渋谷区)が男性入居者から受け取った、仲介手数料1カ月分の一部返還を命じる判決が出ました。賃貸管理・仲介会社に大きな影響を与えたこの裁判の経緯をまとめました。
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入居者男性が東急リバブルを提訴
東急リバブルが、自社で仲介した男性入居者から仲介手数料の一部返還要求を受けたことが事の始まりです。男性入居者は、賃貸借契約の締結時に家賃1カ月分の仲介手数料を東急リバブルに支払っていましたが、その後「賃貸借契約前に家賃1カ月分の仲介手数料を払うことは許諾していなかった」として提訴したのです。
裁判では、①東急リバブルが男性入居者へ請求できる仲介手数料の上限金額と②家賃1カ月分の仲介手数料請求の許諾を東急リバブルがどのタイミングで取っていたかの2点が争点となりました。
争点① 仲介手数料の上限
宅地建物取引業法では、借主から取ってもよい仲介手数料の上限を「原則0.5カ月分」と定めています。ただし、仲介依頼が成立するまでに借主から承諾を得ておけば、家賃1カ月分でも違法にならない例外規定も存在します。つまり②東急リバブルが、入居者男性に1カ月分の仲介手数料請求の許諾をどのタイミングで取っていたかという点が、この例外規定の適用を決める重要なポイントとなりました。
争点② 許諾はいつ取られたのか
東急リバブルは、「入居者男性は、仲介手数料が1カ月分であることを認識したうえで1カ月分の仲介手数料を支払った」として、例外規定は満たしていると主張しました。一方で、男性入居者は「原則0.5カ月分を知らずに言われるがまま支払った。仲介手数料に関する事前説明は受けていない」と主張。従って、例外規定は満たしていないとの姿勢でした。
東急リバブル敗訴で決着 賃貸業界へも影響
裁判所の判決では、原告(男性入居者)の主張である媒介依頼成立日までに許諾が得られていないとして東急リバブル側の上告を棄却。仲介手数料の0.5カ月分の返還を命じました。これにより、19年8月に東京地裁が二審で下した「借主の事前許諾なく手数料1カ月分を取ることは違法」という判決が確定しました。東急リバブル側には、13年に男性から受け取った家賃1カ月分の仲介手数料22万5000円のうち、家賃0.5カ月分にあたる11万8125円と遅延損害金の支払いが求められました。
以上が「東急リバブル 仲介手数料裁判」のまとめとなります。この判決は、賃貸管理・仲介会社の実務に影響を与えました。物件調査書や入居申込書などに、仲介手数料に関する注釈を加える、媒介契約用の書式に手数料記載欄を設け、入居者から事前承諾を得るなど、例外規定基準を満たすための取り組みが行われるようになりました。